心地よい同人誌 印刷
都道府県間の1人当たりの医療費の格差の原因は、人口当たりの入院率ではなく、入院した後に在院する日数にある、という分析に基づいています。
そして、在院日数を短くするための方法として、在宅での死の看取り、病院と診療所の連携を強化して切れ目のない医療を実現すること、および療養病床を38万床から15万床に減らす案が提示されています。
このうち介護保険の療養病床については、2011年度末までの廃止がすでに決まっていますので、それだけでも平均在院日数は短くなります。
また、医療保険の療養病床については、2006年7月より診療報酬において患者の特性とコストを反映した包括評価が導入され、急性期病院から気管切開等のある重症な患者の受け入れが促進され、急性期病院における在院日数の短縮に貢献します。
ちなみに、包括評価が導入される前の医療保険の療養病床では、どの患者も基本的には同じ報酬でしたので、急性期病院からの重症な患者はなかなか受け入れてもらえませんでした。
したがって、慢性期において包括評価を導入する前の状況は、同じ包括評価でも、出来高払いから移行した急性期のDPCと大きく違います。
しかし、包括評価の導入に必要な条件は同じで、このうち第1の条件である分類としての妥当性についてはDPCよりも完成度は高いですが、第2の分類をするために用いるデータの質の管理、および第3の医療サービスの質の管理は懸案として残っています。
以上のように、平均在院日数を短縮するために提示された対応には問題がありますが、健診による生活習慣病の減少と比べて、入院医療費を適正化するうえで、はるかに実効性はあるといえましょう。
しかしながら、医療費は空気枕のように、一方を押せば他方が膨らむ性質があります。
平均在院日数が短くなれば、それだけ入院1日当たりの医療密度は高まりますので、在院日数が減った分だけ医療費が減ることはありません。
また、在宅医療や介護保険にコストがシフトしますが、その際、計画されていますように介護給付費や生活保護費も同時に抑制されますと、「介護難民」が発生する危険性があります。
医療サービスの9割近くは居住する県内で完結しますので、保険者を都道府県単位に再編することは、保険料負担と医療サービスの給付の関係を明確にするうえで役立ち、私としても今回の医療改革の中で最も大きな効果を期待しています。
つまり、大枠の交渉は中医協が国レベルで行いますが、少なくともストック部分の施設整備などは県単位に設立される保険者協議会と医師・医療機関が話し合って決めることができます。
保険者のうち、後期高齢者保険については、都道府県単位の広域連合とすることが決まっており、県が直接責任を持たないので不安はありますが、ともかく県単位となります。
また、政管健保についても2008年10月に全国単位の公法人にはなりますが、運営は都道府県単位で、保険料も県ごとに異なります。
なお、全国単位に留まるのは、国の一般会計から給付費の14%の助成を継続する必要があるからであり、また保険料を設定するに当たり、県による加入者の年齢構成と所得水準の相違を調整する必要があるからです。
次に、国保については、都道府県単位での運営を推進するために、県を介した助成がすでに増えており、それに加えて2006年4月から共同事業が拡充されています。
具体的には、高額医療費に対する再保険の対象となる金額が月額70万円から30万円に下がります。
医療費の8割は2割の高額医療費の患者が使っている構成からして、県が国保に対する再保険料を引き上げなければいけないので、保険料のうちの再保険料部分が増え、結果的には保険料は平準化し、合併しやすい環境となります。
ただし、平準化されてもまったく同じ水準にはならず、また保険料徴収の方法も異なりますので、合併は必ずしも容易にならないでしょう。
最後に、最も問題なのは組合健保で、これについては県内の組合の再編・統合の受け皿として地域型組合健保の設立が2006年10月より認められますが、国保と同様に、たとえ受け皿が用意されても、保険料が上がる場合には参加は難しいでしょう。
また、全国単位の組合健保については、県単位の事業所に分割する必要があります。
以上の構想の最大の弱点は、都道府県がこれまで医療行政にほとんど参加しておらず、人材もノウハウも蓄積されていないことです。
こうした理由もあって、県は後期高齢者保険の保険者になることを拒否しましたが、今後、県単位に保険者が再編されるようになりますと、所管ではないので責任はない、という姿勢を貫くことは次第に難しくなり、医療計画策定の責任はいずれにせよ問われることになります。
医療費適正化計画の柱である平均在院日数の短縮化を達成するために、病床規制に留まっていた医療計画が拡充されます。
これまでも病院と診療所、急性期と慢性期などの連携について計画に記載することが求められていましたが、改正により、脳卒中、がん、小児救急医療等の各事業別に、より具体的な構想を提示し、それぞれに対する数値目標と、事後評価の仕組みを用意することが義務化されました。
一方、住民に対しては、各都道府県は、医療機関に関する情報を集約し、わかりやすく提供して、相談に応じる仕組みを制度化しなければなりません。
また、広告規制も見直し、項目ごとの規制から、より包括的な規制に緩和されます。
さらに医療機関の連携によって、患者は退院後に切れ目のないケアが受けられるようになることを受けて、患者が移る際の文書や説明を徹底することが求められています。
一方、株式会社の参入を規制しています以上、医療機関の公共性を担保として提示する必要がありましたので、医業経営の透明性や効率性の向上を目的とした「医療法人制度の改革」も提示されています。
「医療法人」は配当を禁じていますが、そのほとんどは株式会社と同率で課税されており、また出資者はそれぞれの持ち分に応じて、法人の資産を保有しています。
そこで、非営利性を徹底するため、個人の資産を開設時の出資額に留めることに改めること、また公立病院の受け皿となるべき「社会医療法人」を新たに設立することが決まりました。
以上、どれも結構な内容ですが、保険制度の改革と比べて、すぐにインパクトがあるわけではありません。
それは、医療の提供体制は基本的に民間に依存しており、また各医療機関はそれぞれ過去の遺産を背負って毎日の医療を提供しているので、一片の法律改正では簡単に変えられないからです。
たとえば、医療機関の「連携」は、それぞれが機能分化し、競合していないことが前提ですが、医療機関は計画なく整備されてきており、しかもデパートと同じように広範なサービスを提供してきましたので、達成は困難です。
ちなみに2002年度の診療報酬の改定で、比較的難しい手術について件数が一定水準に達しないと、報酬が減額されるようになりましたが、件数と手術成績の間に関係が見られなかったため、減額は2006年度の改定で中止されました。
アメリカで広く検証された両者の関係が、日本では見られなかった理由として、日本で相対的に件数の多い病院も、アメリカと比べれば格段に少ないことが考えられます。
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